
2021アンチチート開発レター


2021アンチチート開発レター
プレイヤーの皆さん、こんにちは!
『PUBG: BATTLEGROUNDS』が、2022年1月12日より無料プレイサービス移行という大きな転換点を迎えることとなりました。
この移行に際して、皆さんがしっかりと実力を発揮することができるよう公正なゲーム環境構築のためのアンチチートが非常に重要な事案となりました。端的に言うならば、PUBG: BATTLEGROUNDSが無料プレイサービスへ移行に伴う不正プログラム使用者増加への懸念がまず最初に思い浮かぶことと思います。
アンチチートは、終わりのない戦いです。しかし私たちは今年一年間もの間、不正プログラムに対応するため多くの準備をしてきました。
このお知らせでは、私たちがどのようなアンチチート対応をしてきたのか、そして現在の状況はどうなのか、そして最後に今後はどういったアンチチートサービスを計画しているのかについてお話しようと思います。
2021年の取り組み
今年2021年、私たちアンチチートチームは、日に日に進化する不正プログラムにより早急な対応をするために、独自的なアンチチートの対応力向上に取り組み、今年上半期から新たなアンチチートソリューションの導入を皮切りに、ゲームクライアントの脆弱性を補完、ハードウェアBANシステムの改善、アビューズ行為の対策強化といったアンチチートの対応を実施してきました。
アンチチートソリューション”Zakynthos”(ジャキントス)の導入
2021年1月より導入された自社開発のアンチチートソリューションZakynthos(以下ジャキントス)をご紹介します。ジャキントスの機能および成果についてお話する前に不正プログラムに対応する私たちのプロセスについてかんたんにご説明します。
現在使用される不正プログラムを調査、確保後に詳細な分析、そして内部テスト実施後に対応策を模索して、探知ロジックを開発後、セキュリティソリューションへこれをアップデートするプロセスを経ることとなっています。
アップデートされたセキュリティソリューションが、ゲームへの影響を最小限にするために安全性のテストを行い、アップデートするといった多くのプロセスを追加で経ることとなります。
もちろん、このプロセスのみで不正プログラムの使用について解決されるのならば良しとするのですが、アンチチートセキュリティソリューションの機能をアップデートした後、一定期間が経過するとソリューションを回避する技術が不正プログラムに適用され、これによりソリューションの感知範囲が狭くなる現象が発生します。このような現象を緩和するためにセキュリティソリューションを定期的にアップデートをしています。
現在までPUBG: BATTLEGROUNDSは、不正プログラム使用に対する探知の多くの部分を外部のセキュリティソリューションに頼ってきましたが、前述したプロセスをより迅速かつ効率的に対応してくれ、外部ソリューションと相互補完することができる追加措置のためのソリューション、ジャキントスを開発しました。
ジャキントス導入以後、不正プログラム使用状況が昨年に比べて約28%改善されたという成果があり、このソリューションには次のような機能としてアンチチートアクションを継続的に強化しています。
- 機械学習技術による不正プログラム分析の自動解析
- ランクマッチ上位区間での24時間監視
- カーネルドライバーの実装
- クライアント改ざん防止
- ハードウェアBANシステム
ハードウェアBANの改善&不正プログラム使用者排除措置適用
不正プログラム使用者のハードウェア情報を収集し、措置をとるハードウェアBANはこれまでも実施してきましたが、これまで私たちが収集してきたハードウェア情報の場合、MACアドレスやマザーボード番号などの主要機器情報を改ざんすることができるソフトウェアを使用して比較的容易に迂回することができていました。
また、不正プログラム使用者あるいは不正プログラム使用者が使用した機器を確認後迅速に措置をとることつまり、リアルタイムかどうかというのは、アンチチートの側面から非常に重要な価値です。しかし既存のハードウェアBANは、リアルタイム性に比較的欠けていた部分がありました。これは一般のプレイヤーが使用するハードウェアを間違って摘発してしまうことを防止するために緻密な検討が必要だったからです。
これらの問題を解決するために、特殊なアルゴリズムを利用したハードウェアBANの新技術を開発し、Zakynthosに実装しました。このアップグレードの結果、不正プログラムを使用するプレイヤーに遭遇して通報を行うプレイヤーの指標が30%近く改善しました。また、新しいハードウェアBANにより、ペナルティ措置の対象となったプレイヤーが禁止措置を回避することができなくなり、アンチチートの指標においても一定の成果を上げることができました。
ゲームクライアントの脆弱性
2021年には、クライアントの脆弱性を利用したチートへの対策にも力を入れてきました。
まず、スピードハッキングやフライングカーへの対策として、キャラクターや車両の移動時のスピードや滞空時間をサーバー側でクロスチェックするように変更しました。しかし、応答性が重視されるゲームプレイにおいては、サーバーがすべてをクロスチェックしてしまうと、キャラクターの動きや車両の操作性が低下してしまう可能性があります。
そこで、チートプレイヤーのプレイパターンを分析して、特定のアカウントにのみサーバー側のクロスチェックなどの防御システムを適用することができました。その結果、キャラクターや車両の移動に関するチートプログラムを使用するプレイヤーの数が、99.97%減少するという驚異的な成果につながりました。
次に取り組んだのが、あり得ない距離からキルを行うチートや、クロスヘアを相手に自動的にセットするチート (一般的にはAimbotと呼ばれるもの) への対策です。これらのチート行為は、プレイヤーの継続的なプレイ意欲に特に悪影響を及ぼすため、コンテンツ開発チームと緊密に連携し、武器の発射に関する様々な検証や防御メカニズムを追加し、さらにチートプレイヤーによるクライアントの改ざんを防ぐために、Zakynthosを強化しました。
アビューズ行為の対策強化
アンチチートの強化により、より多くのアカウントが利用停止されるようになると、チートプレイヤーは代替アカウントの獲得に目を向けるようになりました。ランクマッチに対応したアカウントの需要が高まるにつれ、異常な方法で生存マスタリーXPを獲得したアカウントも頻出するようになりました。
また、上位のランクマッチにおいて、残念なことに、RP (ランクポイント) 獲得のためにチートプレイヤーとチームを組んで不当に有利にゲームを進めるプレイヤーが増えています。
チートプログラムに対抗することは非常に重要ですが、公正なゲームプレイ環境を提供するためには、このような不正行為を取り締まることも重要だと考えています。機械学習技術を導入し、不正行為の事例を分析することで、悪質な行為を行ったプレイヤーへのペナルティを強化させています。
そうした取り組みの結果、異常な方法で生存マスタリーXPを獲得するプレイヤーの数が約30%減少し、上位のランクマッチで不正にRPを獲得するプレイヤーの数が約50%減少しました。改善が行われ、不正行為をできなくなったことがプレイヤーに周知されることにより、この数字は減り続けています。
現在のアンチチート状況
アンチチートチームでは、様々な指標を参考にゲームの全体的なアンチチート状況の評価を行っています。まず、月間のプレイヤー数のうち、チートプレイヤーの疑いのあるアカウントがいくつあるかを確認します。この指標で、アンチチート全体の状況を直感的に把握することができます。
今年のアンチチートの目標を達成したことで、チートプレイヤーの疑いのあるアカウントの比率は2021年初頭と比較して約45%減少し、状況は継続的に改善されています。クライアントの脆弱性を修正したことで、チートプレイヤーの1セッションあたりの平均キル数は継続的に低下しており、チートプレイヤーのサービスに与える影響が減少していることを示しています。
昨年と比較しても、永久的な利用禁止の件数は約47%減少しています。月間トラフィックに占めるチートプレイヤーの疑いのあるプレイヤーの割合が減少し、同程度の水準で推移していることから判断して、チートプログラムの利用者が大幅に減少したことを示していると考えられます。


フリープレイウィーク期間中のアンチチート分析
これまで、2020年と2021年に1回ずつ「フリープレイウィーク」イベントを実施しました。このウィークエンドイベントは、ゲームの効果的なマーケティングであると同時に、無料プレイ環境でのアンチチート能力に関する貴重な洞察を得ることができました。
2020年6月の「フリープレイウィーク」イベントでは、チートプレイヤーの疑いのあるプレイヤーの割合が、特にノーマルマッチで急増しました。ところが、2021年8月の「フリープレイウィーク」イベントでは、チートプレイヤーの疑いのある人の割合は、イベント開始後に急増しましたが、最終的には回復してイベント前の数値に落ち着き、Zakytnthosの効果が証明されました。

ランクマッチでのチートプレイヤーの報告
上位ランクのプレイヤーから「チートプレイヤーに遭遇した」という報告が増えてきたため、ランクポイントの範囲ごとに報告率のデータを調査しました。以下のグラフを見ると、今年の初めは報告率が比較的高かったのですが、数か月かけてアンチチートを強化していくうちに徐々に下がっています。すべての割合が大幅に改善されたわけではありませんが、出だしとしては好調であり、アンチチートソリューションのさらなる強化を計画しています。

アンチチート今後の計画
現在までの状況について話をしてきましたが、無料プレイの実装、およびそれ以降に向けてのチームの取り組みを簡単にご紹介します。
現在、新たに改良を行ったアンチチートの強化を継続的に準備しています。一例を挙げると、SMS認証システムの回避や、他のプレイヤーのアカウントのハッキング行為への対策状況を改善するため、積極的な検討を行っています。
ランクマッチでの不正行為を削減するために、ランクマッチの生存マスタリーのエントリーレベルを上げてはどうかといったご提案を皆さんからいただいています。この提案についてもちろん検討しましたが、特に無料プレイで新規プレイヤーが大量に流入する可能性がある中で、初心者や既存プレイヤーがランクマッチのエントリー要件を満たすのが難しい環境を作ることにはリスクが伴うため、慎重にならざるを得ません。もちろん、最終的な解決策に向けて、この提案を含めさまざまな案を慎重に検討していきます。
プレイヤーがゲーム中に直面する迷惑行為は、チートだけではありません。これらのチートのプロモーションやスパムも、依然として問題となっています。インゲームで行われているチートソフトのプロモーションは継続的に監視しており、徐々に改善されていますが、今後も違法なプロモーションが行われないよう、取り組みを強化していきます。また、不正なソフトウェアを開発、提供、販売している者に対しては、これからも積極的に法的措置を講じていきます。
また、コンソールプラットフォームでは、チート対策が強化されます。12月初旬にはラグスイッチへの対策を行いましたが、コンソールプラットフォームでのゲームプレイに悪影響を及ぼす不正なコントローラーアクセサリーの使用に対する解決策の研究、開発を続けています。
さらに、ESP (敵の位置を表示する機能) やAimbotなど、報告の多いその他のチートソフトについても、引き続き解決策を検討しています。
より詳細な情報を皆さんと共有したいのはやまやまですが、チート開発者は常に私たちの一挙手一投足を監視し、より強力なチートソフトを開発するために私たちの情報を利用し、私たちのソリューションの一歩先を行っています。そのため、私たちは可能な限り関連のある有望な情報を共有する一方で、それ以外の情報は公開を控えるようにしています。
皆さんが、私たちのアンチチート活動に大きな関心を寄せてくださっていることや、BATTLEGROUNDSのような対戦要素の高いゲームで高い基準を求め続けていることは承知しています。アンチチートに関する情報の公開には慎重にならざるを得ない側面もありますが、できるだけ密に情報を公開していきたいと考えています。時期については約束できませんが、注目すべきアンチチートの成果が出た時点で、またお知らせします。
PUBG: BATTLEGROUNDSは無料プレイサービスへと移行しますが、不正プログラム使用者との戦いは続きます。私たちは、皆さんへの情報公開を行うだけでなく、皆さん自身がアンチチートソリューションの効果を実感できるよう、全力で取り組む所存です。今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、バトルグラウンズでお会いしましょう。
PUBG Anti-Cheat Team
